フリーランスや個人事業主は、業務に必要な支出を経費として登録できます。
しかしながら、個人用の支出との境界線が曖昧であり、何が経費対象で何がそうでないか迷うこともあるかもしれません。
このため、この記事ではフリーランスや個人事業主が経費として計上できるものの種類や具体例、そして必要な書類について説明します。
「これは経費として認められるのか」や「この費用は経費対象となるのだろうか」といった不安を感じることがないよう、適切な判断基準を把握しましょう。
フリーランスの経費とはどのようなもの?
フリーランスや他の個人事業主にとって、経費とは、ビジネスに費やしたお金のことを指します。
たとえば、オフィスの家賃や光熱費、ビジネスで使っているパソコンの通信費、オフィス用具の購入費などは、全て経費になります。
同様に、取引先との会議のために外出した際の交通費や、会議の際に訪れた飲食店での出費なども、経費として計上できます。
フリーランスや他の個人事業主が支払う税金は、収入から経費を差し引いた所得に基づいて計算されます。従って、経費の計上が少ないと、税金もその分高くなります。
経費を漏れなく計上することは、適切な申告と節税の両面において重要です。
経費計上額に上限はありませんので、実際にビジネスで使った費用は積極的に記録しましょう。ただし、事業目的に関わらない支出を経費として申告することはできません。
経費はフリーランスになる前から発生していることも・・・
個人事業主の方々が事業を始める前にかかる経費についてです。
ビジネスのために、PCを用意する・ウェブサイトを立ち上げる・名刺を作るなどの項目が挙げられます。
さらに、独立開業に向けたセミナー参加費や参考書の購入なども考えられます。
これらのコストの中で、資産の償却には該当しないものがあります。それが「開業費」と呼ばれるものです。
開業費とは、ビジネスに必要な出費を開業日前にしたものです。時期に厳密なルールはないものの、一般的な準備期間は半年から1年ほどでしょう。
その一方で、10万円以上かかるPCなど、1年以上の使用を見込む機器は資産償却対象になります。個人事業主の方にとっては、PCやタブレットなどがこの範囲に該当します。
また、開業費と減価償却費は、どちらも事業に必要な経費ですが、帳簿上の取り扱いが異なります。
開業費は「繰延資産」として記録され、任意で償却を行うことができます。事業が黒字になると、開業費を経費として計上することで節税効果が期待できます。
一方、減価償却費は耐用年数に基づいて徐々に償却されます。
フリーランスにおける経費の種類とは?
ここではフリーランスにおける経費の種類について解説していきます。
パソコンなどのソフトウェア
フリーランスが使用するソフトウェアは経費として計上可能ですが、取り扱いは購入価格によって異なります。
10万円未満の場合、消耗品費として扱われ、年度内に経費として計上できます。
一方、10万円以上のソフトウェアは固定資産として扱われ、固定資産台帳に登録が必要です。 これらのソフトウェアは通常5年の耐用年数を持ち、毎年一定額の減価償却を行い、経費として計上する必要があります。
ソフトウェアはフリーランスにとって重要なツールであり、経費として計上することで節税効果が期待されます。 ただし、購入価格によって計上方法が異なるため、適切な管理と計上を心がけましょう。
外注費
フリーランスが業務を外部に委託し、対価を支払う場合、経理上ではそれを「外注費」という勘定科目に記入することができます。
プロジェクト進行に欠かせない費用を経費として計上し、税金を節約できるメリットがあります。
外注費には、以下のようなものが含まれます。
- 原稿料や講演料など
- 弁護士や公認会計士、税理士など、特定の資格を持つ人への報酬や料金
- プロスポーツ選手やモデル、外交官への報酬や料金
- 芸能人や芸能プロダクションに支払う報酬や料金
- 宴会などで接客サービスを提供するバンケットホステスやバーホステスへの報酬や料金
プロジェクトを効率的に進めるために外部委託を活用する際は、外注費を正しく計上し、税金の節約効果を享受しましょう。ただし、計上時には正確な金額や詳細を記録することが大切です。
家賃
自宅をオフィスとして使用するフリーランスの方は、家事按分を利用して家賃の一部を経費として申告することが可能です。家事按分を通じて、家賃負担を軽減し、節税効果を享受できます。
フリーランスが家賃を経費として考慮する際の基準として、一般的には家賃全体の3〜4割が目安とされています。
ただし、実際に計上可能な割合は家賃や家事按分の計算方法によって異なるため、適切な割合を把握することが重要です。
交通費
仕事の打ち合わせや現場への移動にかかったガソリン代は事業に必要な経費として算入可能ですが、
家族やプライベートな用途での移動にかかるガソリン代は私用と見なされ、事業経費には含めることができません。
ガソリン代の計上には、事業における自動車の重要性に応じて適切な勘定科目を選択する必要があります。正確な金額を記録することが大切です。
電気やガス、水道代
フリーランスの事業において、電気・ガス・水道代などのインフラ費用を経費として計上することが可能です。ただし、自宅を事務所として利用する場合は、プライベートと仕事の使い分けが重要です。
プライベートと仕事の使い分けが難しい場合には、事務所のスペースの広さや業務に割かれる時間、機器の使用状況などを考慮して、適切な割合を見積もることが重要です。
経費にするためにはどのような書類が必要?
経費計上を行う際には、支払金額や支払い先を証明する書類が不可欠となります。
通常、領収書やレシートを保管しておけば十分です。ただし、支払先の名称や内容が不明確なレシートなどについては、混乱を避けるために詳細な補足を記載しておくことが重要です。
また、取引先への土産や飲食代など、プライベートとの区別が難しい支出についても、関係先の情報を追記しておくことがおすすめです。
領収書がない場合はどうする?
経費を支払ったときに、なんらかの理由で領収書やレシートを受け取れない場合、以下のいずれかを代わりに使うことができます。
領収書やレシートに代わるものとして挙げられるのは、
- 請求書
- 納品書
- 支払通知書
- クレジットカードの明細書
- ATMの振込明細書
- 出入金がわかる通帳のコピー
クレジットカードの明細書や振込明細書、通帳のコピーなどを使う際には、取引先や内訳が分かるよう、必要に応じて情報を追記しておきましょう。
もしも上記の方法が使えない場合、交通費などの経費に関しては、出金伝票を作成して処理します。出金伝票とは、フリーランスや個人事業主がいつ、誰に、いくら、何のために支払ったのかを記載するものです。
出金伝票は、他者の証明がなくても経費を記録できる便利な方法ですが、度々妥当性の低い状況で使用すると、税務署から疑われる可能性があります。
正確な経費の記録を確保する意味でも、他に手段がない場合にのみ利用してください。
インボイス制度に関する領収書やレシート
2023年10月からインボイス制度が開始され、領収書やレシートの扱いが変更されました。
まずは、インボイス制度は、消費税を正確に申告するための制度であり、公式名称は「適格請求書等保存方式」です。
2023年10月以降は、インボイスがない場合、課税事業者は売上の消費税から仕入税額控除を受けることができません。言い換えると、要件を満たす内容が記載されていれば、領収書やレシートも適格請求書として認められます。
以下では、免税事業者、適格請求書発行事業者、小規模事業者が、領収書やレシートの処理方法についてどのように変更されるかを詳しく見ていきましょう。
免税事業者のケース
インボイス制度が開始されても、免税事業者である個人事業主は、領収書やレシートの取り扱いを変更する必要はありません。これまで通りに保管し、経費として申告できます。
領収書やレシートの保存期間は、青色申告事業者が通常7年、白色申告事業者が5年です。
適格請求書発行事業者のケース
インボイス登録後、適格な請求書を発行する業者になると、領収書やレシートがその要件を満たすかどうかで処理が変わります。
適格な請求書を発行する業者は、課税売上高から課税仕入れ額を差し引いて消費税の申告と納税を行います。
これは、「仕入税額控除」として知られています。
ただし、インボイス制度が導入されると、原則として適切な請求書(インボイス)がない場合、仕入や経費に対する税額控除は適用されません。(ただし、簡易課税制度を選択している場合は除く)
また、免税事業者からの一定期間の仕入れに対しても、一定の割合だけ税額控除が可能な過渡措置があります。
フリーランスや個人事業主がインボイス制度を利用して消費税課税業者として登録する場合は、消費税の確定申告が必要になります。
したがって、受け取った領収書やレシートが適格な請求書の要件を満たしているかどうかを確認した上で、経理処理を行ってください。その後、文書を7年間保存してください。
適格な請求書(インボイス)を発行した場合も同様に7年間保存してください。
小規模事業者のケース
2023年10月1日から2029年9月30日までの期間、小規模事業者は「少額特例」を利用できます。
この特例により、税込1万円未満の課税仕入れについて、適格請求書を保存していなくても、一定の条件を満たした取引を帳簿付けしていれば、仕入税額控除の対象となります。
この制度は、適格請求書発行事業者として登録申請した小規模事業者の事務負担を軽減することを目的としています。
なお、「小規模事業者」とは、以下の条件のいずれかを満たす事業者のことを指します。
- 基準期間における課税売上が1億円以下の事業者
- 特定期間における課税売上高が5,000万円以下の事業者
基準期間とは、納税の判定基準となる期間であり、フリーランスや個人事業主に関しては前々年、法人に関しては前々事業年度を指します。
特定期間とは、個人事業者については前年の1〜6月まで、法人については前事業年度の開始日以降6か月を指します。
フリーランスと電子帳簿保存法
2022年1月から、改正電子帳簿保存法が施行されました。
改正により、全ての企業は準備しなければならないことは、電子取引のデータを保管することです。具体的には、領収書やレシートを電子データで受け取った場合は、そのまま電子形式で保管しなければいけません。
つまり、紙に印刷して保存することは認められていませんので、ご注意ください。
この電子帳簿保存法には、2023年12月31日までの猶予期間が設けられています。
2024年1月1日以降の取引では、義務化されます。領収書やレシートを電子的に保管する場合、保存だけでなく、改変や削除を防止するシステムを導入したり、不正な修正や削除を防ぐ手続きを整えたりする必要があります。
電子取引のデータ保存要件に適合した保存方法と運用を行うようご留意ください。
2024年1月1日以降、紙で受け取った領収書やレシートは、紙のまま保存しても問題ありません。要件を満たせば、スキャンして電子的に保管すれば、紙の原本は廃棄可能です。
電子帳簿保存法の「スキャナ保存」基準に従って保管が必要なので、スキャンを希望する場合は確認しましょう。
まとめ
今回はフリーランスの経費について詳しく解説しました。
フリーランスの皆様には、経費に関する理解が深まると幸いです。税金のことはややこしく感じることもありますが、確定申告の期日が迫ってからレシートが見つからないなど慌ただしくなることを避けるためにも、日々それをこなしておく必要があります。
毎月、領収書やレシートなどを適切に分類して記録しておくことは大切です。
さらに、フリーランスとしての支出を毎月把握することは、自身の節約にも繋がるので重要です。