フリーランスとして働く場合、どんな健康保険を選ぶかが重要になります。
この記事では、フリーランスが利用できる4種類の健康保険の種類を詳しく説明します。
合わせて、健康保険に加入しないと発生するリスクについても焦点を当ててみます。
フリーランスとして働いている方、またはこれからフリーランスになろうとしている方は、自分の健康と生活を守るために、この記事を読んで適切な保険を選びましょう。
フリーランスは健康保険に入らなくてもいいの?
日本において国民は、フリーランスを含め、何らかの公的医療保険に加入する必要があります。
万が一病気やケガで働けなくなった場合でも、医療費の負担を軽減し、安心して療養に専念できる環境を整備することができるからです。
しかし、フリーランスの場合、会社員とは違い、雇用主が保険料を負担してくれるわけではありません。
そのため、国民健康保険に加入し、自ら保険料を納める必要があります。
未納分の保険料は最大2年まで請求される
もし、加入せずに放置した場合、 最大2年間さかのぼって保険料を支払う義務が発生します。
これは、本来加入するべきだった期間分の保険料を徴収するためです。
さらに、加入していない期間に病気やケガで医療機関を受診した場合、全額自己負担となるだけでなく、差額徴収制度により、本来であれば健康保険で賄えた分の医療費を後から請求される可能性もあるのです。
つまり、フリーランスであっても、健康保険加入は義務であり、加入を怠ると経済的なリスクを伴うことを理解しておきましょう。
会社員とフリーランスの健康保険の違い
会社員が加入する健康保険とフリーランスが選べる保険制度には、保険料や手続きなど大きな違いがあります。
会社員とフリーランスの健康保険の違いについて詳しく見ていきましょう。
会社員の健康保険とは
日本の会社員が加入する健康保険は「社会保険」の一部で、「健康保険」とも呼ばれます。
雇用主が従業員の健康保険料を一部負担し、残りを従業員が支払う形で成り立っています。
会社員の健康保険の主な特徴は、保険料の負担が労働者と雇用主が折半であるということです。
病気やケガで医療機関を受診した際、保険証を提示することで医療費の自己負担が3割に抑えられます。
さらに、高額療養費制度を利用することで、自己負担額が一定以上になった場合には補助が受けられる場合もあります。
福利厚生として、出産手当金や傷病手当金などの給付もこの中に含まれています。
また、大企業や特定の業種には独自の健康保険組合があり、一般的な健康保険よりも給付が手厚い場合もあるのです。
フリーランスの健康保険とは
フリーランスや自営業者が加入する健康保険は「国民健康保険(国保)」です。これは、市町村が運営し、加入者自身が全額保険料を負担します。
フリーランスの健康保険の主な特徴は、保険料が前年の所得に基づいて決定され、全額を自己負担することです。
会社員の健康保険と同様に、医療機関での自己負担は3割です。
また、高額療養費制度も利用できます。
フリーランスとして独立した場合や転職などで国民健康保険に切り替える場合には、市区町村の役所で手続きを行います。
その他の給付として、出産育児一時金や葬祭費などがありますが、会社員の健康保険に比べると福利厚生は限られてしまいます。
フリーランスが選べる4種類の健康保険
フリーランスは、国民健康保険、任意継続保険、家族の扶養加入、業界別健康保険組合の4つの健康保険から選択できます。
それぞれの特徴と加入方法について詳しく見ていきましょう。
1. 国民健康保険に加入する
自営業者やフリーランスが最も選択する健康保険が国民健康保険(こくみんけんこうほけん)です。
ここに加入すると、医療費が大きく支援されます。
費用は収入に応じて算出され、所得が少ない時は保険料も少なくなる仕組みが特徴です。
また、出産手当金、育児休暇などの子育て支援や、後期高齢者医療保険への移行、医療費の自己負担割合軽減などの高齢者向けの支援が受けられることも国民健康保険の大きなメリットですね。
ただし、逆に収入が多いと、負担も大きくなる可能性があることを理解しておく必要があります。
また、傷病手当金などの制度がないことにも注意が必要です。
国民健康保険に加入する方法
フリーランスの場合、会社員の健康保険とは異なり、自ら国民健康保険に加入する必要があります。
加入手続きは、お住まいの市区町村役場の国民健康保険課で行います。
加入手続きに必要な持ち物は以下の通りです。
- 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
- 資格喪失証明書・離職票・退職証明書など喪失年月日のわかるもの
- 口座振替用口座の通帳・キャッシュカード
- 印鑑
扶養家族がいる場合は、扶養家族の加入申請も忘れないようにしましょう。
また、国民健康保険への加入手続きは、退職後14日以内に行う必要があります。
加入手続きを怠ると、さかのぼって保険料を支払う義務が発生するため、注意しましょう。
2. 会社員時代の健康保険を任意継続する
会社員を辞めて間もない場合、以前加入していた健康保険を任意継続利用することが可能です。
この制度を利用するには、退職後2ヶ月以内に手続きを完了させなければなりません。
任意継続の最大の利点は、会社員時代と同等の医療サービスを受けられることです。
しかし、期間は最長で2年と限られており、会社が負担していた分を自己負担するため保険料が高くなるケースが多いです。
自身の経済状況を考慮し、適切な選択をすることが重要です。
また、任意継続のための条件は以下の通りです。
- 会社員を退職したこと
- 退職前の会社で2ヶ月以上被保険者であったこと
- 退職後20日以内に任意継続の加入手続きを行うこと
会社員時代の健康保険を任意継続する方法
まず、任意継続被保険者資格取得申出書を、以前加入していた健康保険組合か全国健康保険協会支部に提出します。
この申出書は、退職者本人が記入し、必要な書類を添付する必要があります。
提出後、初回の保険料を納付することが求められます。
納付方法は、口座振替や納付書によるものが一般的です。
任意継続の資格を喪失する可能性があるので、保険料は期限までに必ず納付するようにしましょう。
3. 家族の健康保険組合に扶養として加入する
配偶者や親が会社員の場合、その家族の健康保険に扶養として加入する方法もあります。
この方法を選ぶ大きなメリットは、自己負担の保険料が不要という点です。
ただし、以下の条件を満たす必要があります。
- 民法の規定による配偶者であること(内縁関係の人は該当しません。)。
- 納税者と生計を一にしていること。
- 年間の合計所得金額が48万円以下(令和元年分以前は38万円以下)であること。(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)
- 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないことまたは白色申告者の事業専従者でないこと。
(出典:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1191.htm )
ただし、フリーランスとしての収入が増えた場合には、扶養を外れる必要があるため、定期的な収入の見直しが必要です。
4. 業界別健康保険組合に加入する
フリーランスの方々には、国民健康保険の他に「業界別健康保険組合」への加入という選択肢も存在します。
この「業界別健康保険組合」は特定の職種に特化した保険プランを提供しており、加入する組合は職業や活動地域によって異なります。
保険料の計算方法やカバー範囲も組合ごとに様々です。
業界別健康保険組合の主なメリットは、特定の業界に特化した保険サービスを受けられる点です。
これにより、同業他社との連携が強く、業界特有のリスクに対応した医療サポートを受けやすくなります。
また、業界組合によっては、一般的な国民健康保険よりも手厚い保険給付を提供している場合もあります。
所得が高い場合、通常の国民健康保険よりも費用が抑えられる可能性があるのです。
業界ごとに分かれた健康保険組合が存在するため、同業者からの情報を集めることがお得なプランを見つける鍵となることがあります。
例えば、「文芸美術国民健康保険組合」では、文芸や美術、著作などの芸術活動を行っている方が加入対象です。
この組合の保険料は組合員の収入に関わらず一律19,600円で、加盟するためには特定の団体の会員である必要があります。
加盟団体の年会費などの追加費用が発生するので、そういった点にも注意が必要です。
フリーランスが健康保険料を安くする方法
フリーランスにとって、国民健康保険料は大きな負担ですよね。
保険料を少しでも安くする方法をいくつかご紹介します。
1. 所得の調整を行う
国民健康保険料は前年の所得に基づいて計算されます。
事業経費を適切に計上し、所得を正確に申告することで、所得金額を減少させ、それに応じて保険料を下げることができます。
また、支払った国民健康保険料や国民年金保険料は、所得控除の対象となります。
確定申告時に忘れずに控除申請を行いましょう。
その他にも、配偶者や扶養家族がいる場合は、配偶者控除や扶養控除を受けることで、所得税と住民税を軽減することができます。
例えば、年間所得が600万円の場合、経費を200万円計上することで、所得を400万円に減らすことができます。
すると、保険料は約3万円節約できるということになります。
2. 保険料の減免制度を利用する
多くの自治体では、所得が低い世帯、高齢者、障害者などを対象に国民健康保険料の減免制度を設けています。
自身の状況が減免の条件に合致するかを確認し、申請することで保険料が軽減される場合があります。
詳細は居住地の市町村役場で確認しましょう。
3. 分割払いや口座振替の利用
保険料の一括払いが難しい場合は、分割払いを選択することも一つの方法です。
また、多くの市町村では口座振替での支払いを選ぶと、手数料が割引されることがあります。
手数料の削減は、長期的に見ると保険料全体の負担を軽くすることができるということです。
4. 法人化する
法人化することで、健康保険組合や協会けんぽに加入できるようになります。
これらの組合・協会の保険料は、国民健康保険料よりも安くなる場合が多いです。
例えば、年間所得が600万円の場合、法人化することで、約20万円保険料を節約できます。
また、法人としての節税対策が可能になるというメリットもあります。
フリーランスの健康保険に関するよくある質問
フリーランスの健康保険は、会社員時代と違って自分で手続きしなければいけないこともあり、よくわからないことも多いでしょう。
フリーランスの健康保険に関するよくある質問をご紹介します。
Q: フリーランスとして国民健康保険に加入する際、保険料の計算はどのように行われますか?
国民健康保険の保険料は、前年度の所得、世帯構成、居住地域に基づいて計算されます。
所得が多いほど保険料も高くなり、逆に所得が少ない場合は保険料が軽減される可能性があります。
具体的な計算方法は市町村の国民健康保険課で確認できますし、多くの市町村ではオンラインで予測計算を行うサービスも用意されています。
Q: フリーランスは健康保険料を経費にできますか?
フリーランスの健康保険料は、残念ながら経費にできません。
経費とは、事業を行うために直接必要な支出を指します。
国民健康保険料は、個人の生活のために支払うものであり、事業に直接関係する支出ではないと判断されるためです。
ただし、国民健康保険料は、確定申告をする際に「社会保険料控除」として所得から控除することができます。
所得控除とは、所得から一定の金額を差し引くことができる制度です。
控除を受けることで、支払った国民健康保険料の一部が、課税対象から除外されることになります。
まとめ
今回はフリーランスが選択できる健康保険の種類についてご紹介しました。
フリーランスとして働く場合、健康保険への加入は避けて通れない重要なものです。
健康保険に加入することで、病気やケガなどの不測の事態に備え、経済的なリスクを軽減することができます。
また、適切な健康保険を選ぶことで、保険料の負担を最小限に抑えることが可能です。
フリーランスの健康保険選択には様々なオプションがありますが、自分のライフスタイルや収入状況に合わせた最適な保険を選ぶことが大切です。
国民健康保険、任意継続保険、家族の扶養加入、業界別健康保険組合など、それぞれの特徴を理解し、自分に合った保険を選びましょう。
フリーランスとしての仕事は自由度が高い反面、自分で管理しなければならないことも多くあります。
健康保険の選択もその一つです。
しっかりと準備をして、安心してフリーランスとしてのキャリアを築いていきましょう。